クールな部長とときめき社内恋愛
出社して普段通り仕事が始まると、わたしたちは仕事中それぞれ集中していて、朝冗談を言っていた逸希さんがなにかミスするようなことはやはりなかった。

会議の資料を作成し、人数分プリントアウトして一段落ついたところで休憩しようと自販機へと向かう。
逸希さんの部屋に置いてある着替えはそのまま置いておけばと言われたから、今日はそのまま自宅に帰ろう。

そんなことを考えながら自販機で飲み物を買っていたとき、通路の方から人がやってきて、気づいたわたしはドキリとした。


こちらに向かってくるのは、春伸さんだ。
倉山常務の元恋人だから、逸希さんはわたしに近づいたのだとわざわざ教えてくれときのことを思い出し、この人とは仲良くなれそうにない気がした。

近づいてくる春伸さんに挨拶をしてすぐ離れようと思ったけど、彼がじっとわたしのことを見ながら向かってくるので硬直してしまった。

「よかった。君に会えないかなと思って歩いていたところだった」

それは、わたしになにか話があるということだろうか。
相手の言葉が気になり、窺うように見上げていると、息をついた春伸さんは静かな声を出した。

「君に余計なことを言った、悪かったよ」

冷徹な雰囲気を醸し出したまま謝る彼に、わたしは唖然としてしまう。
この前は、あんなに意地悪そうに話をしていたのに、急にどうしたのか。目をぱちぱちとさせるわたしに、春伸さんはばつの悪そうな顔をする。
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