クールな部長とときめき社内恋愛
「大丈夫か？」

ふいに、頭を優しく撫でられてドキッとした。
わたしのことを慰めるように触れてくれる彼の手に、目もとが熱くなってくる。前に進むって決めたはずなのに、本当に情けない。
そんな自分を藤麻さんに知られるのが、わたしは嫌だったんだ。

「……振られたんです。あの日、二年付き合っていた彼氏に。男に振られたから泣いていたんですよ、わたし、ダサいですよね。結婚を意識しはじめたから、別れてほしいって。もう、すごい衝撃でしたよ、今までわたしのことどう思っていたんだろうって」

条件を出したのはわたしだから、聞かれたことにちゃんと答えないと。
もう気にしていないように見せるため、なるべく明るい声で話していたわたしの頬が掴まれて、グイッと顔を上に向けさせられた。

わたしのことを真っ直ぐ見つめてくる藤麻さんに、胸の鼓動が速くなる。苦しい想いでいっぱいだった心の中に、温かなものが流れてきたような気がした。

「わかりやすいんだから、無駄に強がるなって。君の態度を見ていて、泣いていた理由がどうしても気になったんだ。嫌なこと話させて悪かったよ。ほら、もうそんな変な顔するな」

「わ、わわわっ!?」

藤麻さんがわたしの頭を両手でわしゃわしゃと撫でたので、髪が思いっきり乱れる。急にそんなことをされたものだから、思い出していた辛い気持ちは驚きと照れで吹っ飛んだ。
< 23 / 151 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop