昼下がりの情事(よしなしごと)

「働けるくらいなら、身体の方は大丈夫だね」

天野はホッとした顔をした。

美咲には持病があった。

「もしかしたら、彼女を病気に縛りつけていたのは、僕かもしれないな」

天野は苦笑しながら、コーヒーをストローでくるくる…とかき混ぜた。

「彼女がうちの会社に勤めだした頃は、まだ体調に波があってね」

和哉の知らない美咲の時間(とき)だ。

「僕も前の女房と離婚したばかりで、たぶん『負』の波長が合ったんだろうね」

美咲も、病気で気弱になってたからプロポーズを受けたのかもしれない、と言っていた。


「美咲が病気から解き放たれたら、きっと僕の元から去っていく、って心のどこかでわかってたんだね」

天野は気の抜けたような笑みを浮かべた。

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