昼下がりの情事(よしなしごと)
魚住は、神妙な面持ちで、志郎の目の前に両脚をそろえて立った。
「……美咲をいただきます」
そう告げると、魚住は、いきなり腰を垂直に折って、深々と頭を垂れた。
折られた腰から伸びる背筋は、まったくたわむことなく、頭頂まで一直線だ。
まるで一枚の檜の板のようである。
身体の両脇にきっちり沿わせた長い腕はもちろん、細くて長い指も、その爪の先までしっかりとまっすぐに伸びている。
直立不動の姿勢から振り下ろされたそれは、まさに「伝家の宝刀」。
……なぜだろう。
お辞儀をしているのに。
こんなに深く頭を下げているのに。
全然、卑屈さが感じられない。
いや、むしろ、威厳さえ感じさせる。
……惚れ惚れするほど美しい「最敬礼」だった。