昼下がりの情事(よしなしごと)
その離婚原因である不貞行為を行った和哉が先刻から美咲の隙をついて、彼女の額や頬や顳顬などに、何気ない調子で軽くキスしている。
もちろん、公衆の面前で、だ。
「……和哉、おまえ、そんなキャラだったっけ?」
佳祐は、高校時代からの親友に訊いた。
「あ、和哉は小学生の頃からこんな感じだから……」
代わりに美咲が呆れた声で答えた。
彼女は人前ではやめてほしそうな口ぶりだった。
和哉と美咲は同じ小学校に通っていた。
美咲によると、放課後はもちろんのこと、先生のいない自習ともなれば、たとえ授業中であっても和哉がいつの間にか隣の席に陣取り、隙をついては彼女にキスしていたらしい。
……おまえら、どんな小学生やねん。
東京で生まれ育った佳祐が、関西で生まれ中学まで育った和哉が聞くと「寒イボが立つ」発音で、心の中でつぶやく。
「口にはしてないさ。ガマンしてるからな」
そんなことも知らず、和哉はいけしゃあしゃあと言った。