昼下がりの情事(よしなしごと)
店員が「バレリーナ」と名のついた結婚指輪をいくつか持ってきた。 バレエが趣味の美咲にぴったりなネーミングだ。
美咲がカーブしたタイプをつけてみたい、と言った。
まずは一番プレーンなタイプのものを試着。
ものすごく指の細い美咲では、その店舗にあった一番小さなサイズでもぐるぐる回ったが、指輪の幅が細めなため、華奢な美咲の指にも違和感なく似合っていた。
細長い美咲の指がますます細く長く見えた。
「……これでいいや」
美咲は夢見る少女のような風貌を裏切って、男前にも即決しようとする。
……おい、美咲、店に入って何分だ?
一生モノだぞ? 店員も唖然としてるぞ?
「美咲、ダイヤはついてなくていいのか?香里ちゃんのはずらーっと一周ついてたぞ?」
和哉が堪らず口を出す。
「フルエタニティはサイズ直しができないから、不便なんだよ」
「それでしたら、こちらのようなハーフエタニティもございますよ」
店員が半周だけダイヤモンドのあるタイプを見せた。
美咲がそれをつけてみる。
さすがに、こちらの方が豪華で見栄えがいい。
「ダイヤモンドがあるところはアームに傷がつきにくくていいんですよ。結婚指輪は毎日つけるものですから、傷が結構つくんですよ」
店員が説明する。
美咲が上目遣いで、いい?と和哉に問うた。
……美咲、かわいすぎるぞっ!
もちろん、和哉は肯いた。
美咲はうれしそうに微笑んだ。
やっぱり、プレーンなのを選ぼうとしていたのは、遠慮していたからだ。
和哉は香里からのもう一つのコマンドを実行した。
「……婚約指輪も見せてください。
もちろん『バレリーナ』で」