昼下がりの情事(よしなしごと)
美咲は震える指で、ある指輪を示した。
「バレリーナ・ソリテールでございますね」
店員がホッとした声で言った。
中央のダイヤモンドの四隅に小さなダイヤモンドが施されていて、アームの部分にも小さなダイヤモンドが埋め込まれていた。
バレリーナの中では最高級だった。
……望むところだ。佳祐らのように一流ホテルで披露宴をするわけじゃないから、その分婚約指輪にぶっ込んでやる!
「ほら、美咲、買ってやるからつけてみろよ。先刻の結婚指輪と一緒につけてみな」
それでもまだ躊躇していたので、和哉がつけてやった。
二本の指輪は、美咲の細長い指にしっとりと収まった。まるで、彼女のために誂えたかのようなデザインに見えたほどだ。
すると、美咲が左手を照明にかざしてうっとりとし始めた。
美咲の細い指には〇・五カラットの石が巨大化して見えた。さらに、脇のダイヤモンドたちが互いに共鳴し合って、指輪がキラキラを通り越してギラギラ輝いている。
このくらいのクラスになると、あの香里のハリー・ウィンストンに見劣りしないかも。
それに、こんなになにかに魅了されている美咲を見る方が初めてだった。
「では、新郎様の結婚指輪はいかが致しましょう?」
……そうだ、おれのも買わないと。
和哉は美咲の結婚指輪と同じバレリーナで、カーブはしているが、ダイヤモンドがついていない、一番初めに美咲が見ていたデザインに決めた。
それから、指のサイズを測ったり(美咲のサイズはフランスのサイズで四十五だった)結婚指輪に入れる刻印を決めたりしたあと、支払いを先刻のクレカで済ませて、さぁ帰ろう!としたとき。
美咲が口を開いた。
「……タンクMCを見せてもらえますか」