意地悪な彼ととろ甘オフィス


「なに? 嘘なんかついてないし、第一、もし男の人にやってもらったとしても成瀬さんには関係ない――」
「別に疑ってねぇし。それより、今は、無責任な日向サンの話をしてたんだろ。せっかく先輩が幹事してくれてるのに勝手に帰るつもりでいるなら、おかしいんじゃねぇのって話」

話の途中で遮られる。

聞いてきたのは成瀬さんのくせに。自分勝手な態度にイラッとして眉を寄せると、成瀬さんは私から顔ごと逸らす。

「別に帰ろうとしてたわけじゃないよ。……ちゃんと戻る」

成瀬さんにここまで言われた以上、このまま帰るのも癪に障る。

「そ? ならいいけど」

私の進路を塞いでいた腕を退かすと、成瀬さんはさっさと個室に戻っていく。

仕方なくその後ろ姿を追いながら、どうしてわざわざ止めにきたんだろうと考え……「ただの嫌がらせか」と独り言を落とした。


飲み会も終盤に差し掛かると、恋愛ネタや若干の下ネタが飛び交うようになる。

斜め前に座っている成瀬さんは、女性に囲まれ過去の恋愛について色々聞かれていた。

「成瀬さんって、絶対モテたし相当遊んできたんじゃないですか? 味見してはポイみたいな」

お酒のせいなのか、甘ったるい話し方で女性が聞く。

腕に胸を押し付けられた成瀬さんは、それを注意するわけでもなく「まぁ、否定はしないけどね」と愛想のいい笑顔を振りまいていた。

アイドルがするファンサービスの笑顔と同じ感じだ。

「うわー、最低。でも、遊ばれたい気持ちもわかるかもです」

ぐいっとさらに胸を押し付ける女性に、成瀬さんは、ははっと笑いながら自分の首のうしろをさする。

昔からのクセを見つけ、あ……と思っていたとき、隣の山下さんから話しかけられた。

「日向さんは、今までどんな恋愛してきたの?」

ビール三杯目の山下さんの頬は蒸気していて、元から陽気そうな性格は更に陽気になっていた。

かくいう私も、乾杯のビールと二杯のカクテルで気分がふわふわしているけれど。



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