意地悪な彼ととろ甘オフィス


「どこ行くつもり?」

さっき、他の女性社員相手にしていたときは優しい声をしていたのに。

私相手ってだけでよくここまでツンツンできるものだなと感心さえしてしまう。
二重人格なんじゃないだろうか。

「……関係ないでしょ」
「関係ないけど。もし、俺の顔見て逃げ出したんだとしたら、失礼すぎるから」

腰を折って顔を近づけた成瀬さんが続ける。

「今回の飲み会、みんな楽しみにしてたみたいなんだよね。なのに、そうやって日向サンが嫌な顔して帰ったりしたら盛り下がるよ。それくらいわかんねぇの?」

最後、挑発するように言われカチンとくる。

グッと顔を上げ見ると、成瀬さんは冷めて見える瞳で私を見ていた。

サラサラの茶色い髪も、アーモンドみたいな目も、スッと通った鼻筋も薄く形のいい唇も、ずっと変わらない。見とれてしまうほどに綺麗なままだ。

なのに、私への態度だけを変えてしまった成瀬さんをじっと見上げる。

すると成瀬さんは居心地悪そうに目を逸らした。

「……なに? あんまり見られても困るんだけど」

声は不機嫌そのものなのに、耳が赤く染まっている。

もう酔ってるのかな……と思いながら「見られ慣れてるくせに」と嫌味を返すと、「その顔、どうしたの」とつっけんどんに言われた。

「……顔って、なにが?」
「だから、その髪型とかメイクとか。明らかにいつもと違うじゃん」

成瀬さんに指摘されて、須永先輩に色々としてもらったんだっけと思い出す。

「ああ、先輩がしてくれたの」
「先輩って、女?」

それまで違う方向を向いていた目が私を見る。
鋭く光ったように見えた瞳に、なんとなく恐さを感じながら「うん」と答えると、成瀬さんは「ふぅん」と探るように見てくる。

まるで疑っているような目だった。

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