お見合いさせられました!
エリート男子のご帰還
金曜日の夕方のフロアは、少し賑やかでウキウキした雰囲気が漂っている。
もうすぐ定時、しかも明日は休み。
これから飲みに行く人、デートの人…。

そんな人たちを尻目に、私はこれからの段取りを考える。
帰り道の途中でスーパーに寄って一週間分の食材を買う。
家に帰ったら、まずは平日5日分の作りおきから取りかかろう。
合間に洗濯物を片付けてお風呂の準備をする。
今日の晩御飯は手間のかからないパスタでも作ろうかな。

これがいつもの代わり映えのしない金曜日の過ごし方。

さて、そろそろ帰ろう。
そう思って、デスク周りを片付けていた時、部長がフロアに入ってきた。


「みんな、ちょっといいか~」

部長の声がフロア全体に響き、みんなの視線が集まる。
部長の後ろに背の高い男の人が続いて入ってくる。

背の高い、スーツがめちゃくちゃ似合ってる…。
遠目から見ても、イケメンだとわかる…。


「五十嵐さん!?」

思わず、名前を口に出してしまった自分が恥ずかしく思えて、両手で口を覆って隠した。
フロアはざわついていて、幸い私の声は誰にも聞こえていないようだった。

ただひとり、本人を除いて。






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