泣いた夜は次の空
金色の空
(私は誰を愛せばいいの?…)
そんなことばで私は目を覚ました。いつもと同じ景色。茶色い机に茶色いベット。備え付けのクローゼットが2つ。テレビもあった。なんの変哲も無い部屋に私は少し危険を感じるようになった。決して危険ではなく、むしろ安全であるこの空間でさえ怪しく思えるようになってしまっていた。
私は空が好きだ。また、星も好きだ。あんなに広い空間にいくつもの光が散らばっていて、かつその光が重なり合わないその様は私の心に大きな安寧を与えた。
(広大な空間全てを色で埋める必要はない。私の心も全て何かで埋める必要はない。むしろ、空白があるくらいがちょうどいい。)
そういう意味だと勝手に思っていたが、それが、こころの拠り所にもなっていたので、それを否定することはできなかった。私はよく星をみる。自分の家の屋上からみる星は何と言っても綺麗で、他のどの場所からみる星よりも綺麗だと思うほどだった。中学校の頃にお小遣いを全部使って買った天体望遠鏡。そのおかげで、他に欲しいものは何も買えず、やりたいこともできなかったが、悔いはない。毎日その望遠鏡で夜空を見上げている。田舎には都会に憧れている人が多い。しかし、私はそうは思えない。こんなに自然と身近な距離にあるのに、人間は自然と手を取り合って、協力して生きていく生き物なのに、どうして都会というコンクリートの森のようなところへ行きたいのか。夜空に星のない、人口の星に感動するような人になりたくない。そう思っていた。
「おきなさい」
という母親の声で飛び起きた。朝が来たみたいだ。屋上で寝ていた私をわざわざ風邪をひかないように私の部屋まで運んでくれた父親はすでに出勤していた。
その日の朝はいつもより騒々しかった。
妹の芽衣は朝からおめかしをしていて、どこかへ出かけるみたいだった。
一方の私はというと、寝巻きのまま髪もとかずグダグダと階段を降りていた。
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