ライアーピース



・・・また、夢を見た。


今度は歩夢の夢。


一緒に手を繋いで歩いてる。


私も歩夢も、笑顔で。


ここはどこだろう。


真っ白い空間の中にいる。


歩夢がそっと笑って私を見つめる。


でも、私の視線は
別な方向を向いていた。


(陸・・・・?)


見覚えのある姿。


それは紛れもない陸だった。


陸は小さく微笑むと、
私に向かって手を伸ばした。


私がその手を必死になって
掴もうとした時、夢は覚めた。








「ん・・・」


「若葉。起きたか?」


「歩夢?なんでここに」


「看病しにきたっていっただろ。
 なんか食える?」


「食欲ない」


「じゃあ。おかゆにしてやるから、
 もう少し待っとけ」


「うん。ありがとう・・・」



歩夢が部屋を出ていくと、
この部屋は静寂に包まれた。


冷却シートに、お水。
薬の箱を見つける。


歩夢が買ってきてくれたのかな・・・。


しばらくベッドに横になっていると、
おかゆを持った歩夢が部屋にやってきた。


「ほら、食えるか?」


「うん」


おかゆを食べる私の額を、
歩夢がそっと触れる。


「熱はまだまだあるな。
 どう?調子は」


「寝たらだいぶ良くなったよ」


「そか。良かった」


歩夢は満足そうに笑うと、
私をじっと見つめた。





< 111 / 231 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop