ライアーピース



香水のお店に着くと、
私は大はしゃぎした。


色んな香りの香水が並んでいて、
入れ物も素敵。


歩夢が奥から
一つの香水をとって私に見せた。


「これ、俺が使ってるやつ。
 若葉はなんか良いの見つけた?」


「歩夢と一緒のもいいけど・・・」


今手に取ってるものも
いい香りがして可愛い。


うーんと悩んでいると、
歩夢が言った。


「男と女じゃ、同じ香水つけても、
 体質とかいろいろ違うから、
 その人特有の匂いになるんだよ」


「へえ、香水に詳しいんだね」


「まあ、高校の頃から使ってるからね」


私なんか洒落っ気もないって言うのに。
そう言えば、歩夢はお洒落好きだったっけ。


スーツもいいけど、私服の歩夢もかっこいい。


なんて考えていると、
歩夢が私の顔を覗き込んだ。


「若葉?どーした?」


「へっ?ああ、や、なんでもない」


「どれにするか決めた?」


「う、うん。これにする!」


それは水色の入れ物をした香水。


私は青とか水色とか、
そういう色が好きなんだよね。


特にこの香水、
とってもいい香りがする。


歩夢が香水を手に取って
まじまじと見ると、小さく笑った。


「うん、若葉に合いそう。
 これ買ってあげるよ」


「ありがとう。歩夢」


二人でお店を出る。


夕暮れ時の町は人が賑わっていて
なんだか懐かしい気持ちになる。


香水の入った小さな紙袋を片手に、
歩夢と歩きだした。


「なあ、若葉。あのさ」


「何?」





「近いうちに、両親に会ってほしいんだ」





「えっ?」


歩夢は真剣な表情をして真っすぐを見ていた。


握られた手が熱くなる。









「今度、指輪買いに行こう」








歩夢の言葉は、この雑踏の中でも
はっきりと聞こえてきた。



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