ライアーピース



門の前に行くと、
スーツ姿の歩夢が私を待っていた。


どうしよう。
怒られるかな、


なんて言われるんだろう・・・。


そう思いながら恐る恐る歩夢に近づくと、
歩夢は私を見つけて手を振った。


「お帰り」


「お、お疲れさま・・・」


「よし、じゃあ行くか」


「えっ?」


開口一番に何か文句を言われると
思っていたのに拍子抜けした。


歩夢はにこっと笑って
助手席のドアを開けた。


戸惑いながらも助手席に座ると、
歩夢は車を発進させた。


車は見慣れない道を走る。


移動中、歩夢の顔は見れなくて、
ただ窓の外だけを眺めていた。


私から切り出した方がいいのか、
このまま流されてしまうのか・・・。


そんなことをぐるぐる考えていると、
車がゆっくりと止まった。


「ほら、若葉。おいで」


ドアを開けてそう言う歩夢は、
私の手を取って歩きだした。


そこは小さなジュエリーショップ。


中に入ると、ニコニコした
お姉さんが案内をしてくれた。


「若葉はどれがいい?」


「えっ?」


「指輪。好きなの選んでいいよ」


「で、でも・・・」


「いいから」


歩夢が笑うもんだから、私は
ショーケースの中で光り輝く指輪に視線を落とす。


どれもキラキラしていてかわいい。


私はついつい、値段を見てしまう。


こんな高いの、選べないよね。


安いのを探そうとすると、
歩夢に見透かされた。



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