ライアーピース



「値段、気にすんなよ?」


「う、うん・・・」


なんでバレたの?


戸惑いを隠して私は指輪を選ぶ。


あ、これ可愛いけど、
歩夢には似合わなそう。


せっかく買ってくれるだもん、
歩夢に似合うやつがいい。


歩夢は大人っぽいから、
やっぱり無難にシンプルのやつかな?


しばらく悩んだ後、
私はそっと指を指した。


「これがいい」


「うん。若葉に似合ってる。
 すみません、これお願いします」


歩夢が店員さんを呼ぶと、
すぐにさっきのお姉さんが来て
指輪を出してくれた。


「つけて帰りたいので、
 ケースだけもらえますか?」


「はい。かしこまりました。
 ご用意できましたらお呼びいたします」


お姉さんが奥へと消えると、
歩夢はそっと私の左手を取って
指輪を薬指にはめた。


「歩夢、これ・・・・」


「言っておくけど、
 これは“婚約指輪”だから。
 結婚指輪は結婚式の時に、な」


「あの・・・でも・・・っ」


「気にすんな。
 たまたま大学が同じってだけだろ?
 若葉がプロポーズを受けてくれただけで
 俺は幸せだからさ。
 だから若葉も、
 気にしないで俺だけを見て?」


「歩夢・・・」


「あー。でも、やっぱりあいつ
 許せねぇ~!!って、
 こんなん言ってる俺ってまだガキなんだなぁ」


ははっと笑う歩夢は、
私の顔を覗き込んだ。


「目を瞑るのは
 今回限りだからな?わかった?」


「わ、わかった」


「よし。いい子だ。若葉」


「何?」


「好きだよ」


「え・・・と、あの、
 あ、歩夢!?ここお店だよ」


「そうだった。
 続きは家に帰ってからだな」


ふっと笑ってそう言うと、
店員さんからもらった紙袋を持って車へと戻った。






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