ライアーピース
Piece15



朝起きると、私は1人だった。


歩夢の手を求めて手を彷徨わせる。


けれど歩夢の姿はなかった。


「あ・・・」


そっか、歩夢はもう
いないんだ・・・。


そんな喪失感で、朝を迎えた。


歩夢の温もりが、存在がどれほど
大きかったのかを知る。


ううん。後悔なんてしない。


私は自分で自分の道を選んだんだから。


そんな寂しい朝は1週間たっても
慣れなくて、いつも必ず大きな喪失感を伴う。


「起きなきゃなぁ・・・」


あれから陸との距離感も分からなくなってる。


いつ起こるか分からない記憶障害に
私が追いついていけないだけなんだけど・・・。


ゆっくりと起き上がってシャワーを浴びる。


焼けたトーストにかじりついて、
テレビをつけた。


今日もまた、新しい1日が始まる。


私はこれからどうしていけばいいんだろう。


陸に好きだと言われた。


私も陸が好き。だけど、
付き合おうとか、
そんな話にはなっていない。


ずっとモヤモヤした気持ちを抱えて、
毎日を過ごしている。




「行ってきまーす・・・」


誰にでもない挨拶を
ポツリとすると、私は家を出た。


階段を降りて駐輪場に向かうと、
見知った顔がいた。



「あ、歩夢・・・?」




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