ライアーピース



秋風は冷たく、どこか寂し気に。


公園内に枯れ葉が舞う。


私はゆっくり、ゆっくりと喋った。


「断ち切らなきゃとは思ってた。
 陸のこと好きなままで歩夢と
 一緒にいるなんて申し訳なさ過ぎて・・・。
 でも、歩夢がアメリカに行った途端、
 寂しかったのかな、あたし。
 陸を拒めなかった。
 ほんと、なんでだろう」


「若葉、それはさ―」


歩夢はポツリと呟いた。


「それはさ、大事な時期に一人にさせた
 俺のせいだから仕方ないよ」


「でも」


「でも、ああ言ってくれて
 俺は嬉しかった。俺と楓だけでいいって
 言ってくれて」


「あ・・・」


「俺たちはいつでも、
 一からやり直せるよ。
 何回崩れかけたって」


歩夢が小さく笑う。


そうして楓の頬に触れた。


「若葉と結婚して、この子が産まれて。
 俺は世界一幸せ者だよ」


「歩夢・・・」


「若葉は、幸せじゃない?」


歩夢は私の顔を覗き込んだ。


「私も、幸せだよ」


幸せだよ。本当に。


こんなに大きな愛情で
私を包んでくれる人、歩夢だけかもしれない。


こんなに私を癒してくれるのは、
楓だけかもしれない。


こんなに幸せなのは、
この家庭があるからなのかもしれない。


「俺はいつだって、
 若葉の幸せを願ってるよ」


歩夢が笑って私の頭を撫でた。


その日、私は晴れやかな気持ちで
眠りについた。



そう。


普通でいい。


私には歩夢がいて、楓がいる。


もうこれ以上の幸せは望まない。


それが、私が出した答えだから。


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