ライアーピース
Piece17



あれから、陸は
いつもの公園で見かけなくなった。


私の生活も平凡な毎日に戻っていく。


楓の成長と、
歩夢との幸せのために、
私は毎日を過ごしていた。


楓がやっと「パパ」「ママ」を
言えるようになった頃、


仕事中のはずの歩夢が
急いで家に帰ってきた。


「歩夢!?
 仕事はどうしたの?」


「・・・・はぁ、
 わ、若葉・・・」


「歩夢?」


歩夢は息を切らしながら
大きく肩で息をした。


私が歩夢をじっと見つめていると、
しばらくして歩夢は顔をあげた。


私の両肩を掴んで、
真面目な顔で私を見つめた。


「お、落ち着いて・・・
 聞いてくれ・・・」


「何?」


「佐々木が・・・
 事故に遭った」


「・・・・えっ」









突然のことに、
頭が追いついていかない。


私は歩夢をじっと見つめた。


本当に?


本当に陸が事故に・・・?


「若葉!」


はっと我に返ると、
歩夢が私の手を引っ張った。


「病院に行こう。
 詳しいことは車の中で話すから」


「ま、まって。楓が・・・」


楓の名前を口にすると、
歩夢は息を整えて言った。


「母さんに来てもらってるんだ。
 楓は大丈夫だ」


歩夢がそう言うと、
お義母さんが玄関から顔を出した。


「お義母さん・・・
 楓を・・・お願いします」


「行こう、若葉」




歩夢は私の手を引いて家を出た。


そうして私を車に乗せると、
ゆっくりと車を走らせた。


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