ライアーピース




季節は廻り、1年の月日が経った。


楓を保育園に預けられるようになった私は、
日中はパートとしてスーパーで働くようになった。


動いているほうが
余計なことを考えなくて済む。


昔からそうやって気持ちを
整理していた私は今の生活の方が楽。


歩夢の単身赴任は長い。


時々電話をしたり、メールをしたり、
連絡は取り合っているものの、さすがに寂しい。


歩夢の声を聞くと嬉しくなるし、元気も出る。


楓も私の癒しとなってくれているし、
何とか歩夢と離れた生活にも慣れてきた。


いつものように楓を保育所に預けてから、
私は勤め先のスーパーに向かった。


「おはようございます!」


事務所に入って
タイムカードを切ると、手早く着替える。


最後に髪を結いあげると私の仕事は始まる。


いつものように早速レジ打ちを進めていく。


レジ打ちをしていると、私は
常に今日の晩御飯は何にしようかな~とか、
そういえばシャンプーが切れてたから買わなくちゃ~とか、


いつもそんなことを考えながら
仕事をこなしていた。


今日は雨。


お客さんも疎らで、とっても暇。


お店の外を眺めていると、
人の気配と、カゴを置く音がした。


「いらっしゃいま・・・っ」


笑顔でお客さんを迎える・・・はずだった。


カゴの中にはカップラーメンとお惣菜、
タバコが入っていた。


でもそんなことはどうでもよくって、
私は思わず目をそらしてしまった。


顔が見られない。


だって、だって・・・。




(陸・・・)



心の中で名前を呼ぶ。


目の前に立っているのは、
懐かしの顔だった。



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