ライアーピース
Piece19



ただひたすら、
無心になって部屋を整理する。


大きなバックに必要最低限の荷物を詰め込んでいく。


「よしよし、ママがいるよ~」


ぐずり出す楓をあやして、抱き上げた。


部屋の中を一通り見まわす。


こんなに広い家に自分は住んでいたんだ。


歩夢と、楓と一緒に。


テーブルの上に置かれた紙に
サラサラと名前を書いて捺印する。


そうしてペンを置いて指輪をそっと外した。


「さよなら」


私は小さく呟くと、そっと家を出た。





















「いたいた!若葉~!!」


「ごめん、遅くなっちゃった」


「全然大丈夫だよ。それより、
 久しぶりね。こんな風に会うの」


「うん。ずっとメールだけだったもんね」


そう言って笑った先にいるのは由紀乃。


由紀乃は相変わらず可愛らしくて、綺麗だった。


その隣には中島の姿もあった。


中島は相変わらず私には厳しい。


今も中島は私を冷たい目で見つめるだけだった。



「大ちゃん、だめだよそんな怖い顔」


「あはは。いいよ、由紀乃。
 私が悪いんだし」


中島を怒る由紀乃に笑ってそう言う私。


中島はすっと前に出て私と由紀乃の間に立った。


「不本意だけど由紀乃の頼みだから来てやったよ」


「う・・・。申し訳ない」


「なんでもいいから、早く行くぞ」


「「はーい」」


由紀乃と二人で返事をすると、
中島は車に私の荷物を詰め込んだ。



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