ライアーピース



陸上部の練習が始まる。


歩夢は本当に
私がいるからって同じ部活にした。


おまけに種目まで一緒。


「なあ、ハードルって面白ぇな」


「あのねえ、本当に
 このまま陸上続ける気?」


「当たり前じゃん。
 彼氏よりも長くいたいしな」


「なにそれ・・・」



ちゃんと振ったつもりでいるんだけど、
伝わってないのかな?


こいつ・・・恐ろしくポジティブだ。


「そういえば、
 彼氏くんは部活してんの?」


「ねえ、アンタはここ1か月
 どこ見て部活してんの?」



私が指さすほうを歩夢が眺める。


しばらくしてやっと
発見したのかあんぐりと口を開けた。


「まさか、あいつ・・・」


そう。陸も陸上部。
種目はハイジャン。


春のスポーツテストで
いい記録を残したからか、


噂が先輩達の耳まで伝わり、
勧誘されたってわけ。


本人も楽しそうだし、
何より一緒の部活だから安心する。


歩夢だけは違うみたいだけど・・・。


「どんだけバカップルだよ」


歩夢が舌打ちをした。


「バカップルってアンタねえ。
 人の真似してわざわざ陸上始めたやつに
 言われたくないんだけど」


「ふん。まあいいや。どうせ
 俺と若葉は合宿中同じチームなんだし?」



歩夢はわざと聞こえるように大きな声でそう言った。


やめてよ。陸に聞こえちゃうじゃない。


予想は的中。陸は
動揺したのか跳ぶのに失敗した。


立ちあがって私の方へと歩いてくる。


どうしよう。怒られるかも・・・!?



私は目をつぶって口を開いた。



「陸、ごめんなさ・・・」


「おい、新海。今のどういうことだ」



陸の目は、とても鋭かった。


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