ライアーピース
陸と歩夢が向かい合う。
二人は互いににらみ合って
しばらく沈黙した。
「若葉に近づくな」
「なんで?若葉は
お前の所有物じゃないぞ?」
歩夢が言い返すと、
陸は私のほうを見た。
「確かにお前らは
付き合ってるかもしれないけど、
だからって若葉が男と話すの禁止
っていうルールなんかないんだし、
俺らクラスメートだし。
普通に話したりチームだって組んだりするだろ」
陸は言い負かされてしまったのか、
顔を歪めて黙り込んだ。
「ほらほら、練習の邪魔だよ」
「・・・若葉、部活終わって
着替えたらいつものとこな?」
私の方を見て小さく笑うと、
陸は練習に戻って行った。
「わーかばっ♪練習しようぜ」
「・・・ルールとかチームとか、
競技じゃないんだから」
「え?恋愛は競技でしょ。
勝ったやつが幸せになれんのさ~」
・・・ポジティブもここまでくると
呆れるわ。
私は皮肉のつもりで言ったのに、
こんなやつが一緒で、合宿は大変な行事になりそう。
練習が終わると陸が
いつもの木の下で待っていた。
「・・・でもさあ、
本当に危ないから気を付けろよ?」
「うん。わかってる!」
「本当にわかってんのかねえ。
この無自覚さんは」
「え?」
「いや。なんでもない」
陸はそう言うと、いつものように
私の手を引いて歩きだした。