ライアーピース



バスに乗って移動する。


バスはクラス毎に違うから
陸とはだいぶ離れてる。


だけどここでは由紀乃がいるから安心。


「ねえ若葉、寝癖ついてる」


「嘘、今日寝坊したから
整える時間なかったんだよね」


「貸して、私がやってあげる」


由紀乃が私の髪を整える。


はあ。
こういう時、女子って
素晴らしいなって思う。


私がガサツなだけだけど、
ちゃんとした女の子は
こういう気配り、
ちゃんとこなすんだろうなあ。


由紀乃みたいになりたい。


そう思う時も多々あるけど、
今の自分もわりと気に入ってる。


男子とも女子とも隔たりなく付き合える
この立ち位置が

実は一番心地良かったりもするんだ。





それなのに・・・。


「おっす。おはよう。若葉」


補助席に座ってきたのは、
分かり切っているけど分かりたくない。


楽し気にする歩夢が私を見て
ニヤニヤ笑った。


「なんだその寝癖。お前、本当に女かよ」


「うっさいなー。いいでしょ別に」


ていうか、なんでこいつだけ補助席にいるのよ。


歩夢はリュックの中から
チョコレートを取り出すと


「食う?」と言って私に差し出した。


「由紀乃ちゃんも。あげる」


「わあ、ありがとう歩夢くん」


「私はいい。甘いの苦手」


「え、なんで?いいから食えよ。
 限定チョコだぞ!?」


あー、もう。
やっぱり歩夢と一緒じゃ
波乱の日になりそう・・・。




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