ライアーピース
Piece6



合宿もなんだかんだで終わり、
普通の高校生活が戻ってきた。



あれから陸とは上手くやれてる。


キスはあの夜から
してはいないけれど。


いつものように陸は私を忘れ、
そうして思い出しては
悲しそうな顔をする。


それでも陸なりに、精一杯
私のことを思ってくれてる。


それが嬉しくて、なかなか
本当のことを打ち明けられない。


陸は記憶が持たないんだから、
本当のことを言おうと思えばいつでも言える。


だけどまだ、
そうしたくない自分がいる。


なんでだろう。


付き合うっていうことが
どんなものなのか、十分分かったはず。


それなのに、もっと、もっと、
と欲張りになる自分。


日に日に罪悪感は薄れていくものの、
陸を騙すという行為はとても苦しい。


だって、全てを聞いた朝の陸を見ていると、
純粋な陸の心に傷をつけているような気がするんだもの。



「若葉ー。何真剣な顔してんの?」


「あ、歩夢か・・・なんだ」


「なんだとはなんだよ。
俺じゃ悪いのか」


「誰もそんなこと言ってないでしょーが」




・・・相変わらずなのはこいつも一緒。


歩夢は合宿の日以来、
あの深刻そうな顔を見せない。


いつも通りの明るくてポジティブな歩夢だ。


もしかしたら
私が心配するようなことじゃなかったのかも。



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