ライアーピース
Piece11



陸が言っていたように、
陸は転校することが決まった。


今日でこの高校とも離れてしまう
陸のことを思うと、
朝から胸が締め付けられるような感覚に襲われる。


「えー、突然ですが
 転校することになりました」


淡々と話す陸を、
私は見ることができなかった。


「付き合えない」と、
陸に言われた言葉を思い出す。



好きなのに付き合えないって
どういうこと?


どうして陸は私から離れようとするの?


聞きたいことは、


言いたいことは沢山あるはずなのに、
どうして何も言えないの?


まるで喉の奥がつまったように、
何も言葉に出来なかった。


お昼休みになり、
陸がふらっと教室を出る。


私はその後を追っかけた。


屋上へ続く階段をゆっくりと上ると、
重たい扉を片手で難なく開け放った。


広い屋上のフェンスに寄りかかる陸。


私は意を決して
一歩一歩、前に進みだした。


「陸」


「若葉・・・」


「どうして、転校しちゃうの?」


「それは・・・」



陸が言葉を詰まらせた。


そうして顔をあげて
私を見つめると、陸は言った。


「若葉は、俺のこと好き?」


「えっ・・・」


「好き、か?」


「・・・うん」


私が頷くと、
陸はグーにした拳を差し出した。


「陸?」


「手、出して」


言われた通り手を出すと、
陸は私の手に何かを乗せた。


「これ・・・」


「お守り。俺はお前から離れる。
 だけどもし、いつかどこかで
 また巡り合ったら、それはもう
 かけがえのない運命だな。

 どうしても泣きたくなったりしたら、
 それ見て元気出せよ。
 俺はいつでも、お前の味方だから」


陸が私にくれたのは、
小さな鈴がついたお守りだった。



< 99 / 231 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop