オトナの恋は礼儀知らず
 カフェに来ていた。
 趣のあるカフェは珈琲のほろ苦い香りを店内に漂わせてお客を出迎えてくれる。

 手には送りつけ詐欺にあった名刺。
 送りつけというより置いてけ詐欺か。

 その名刺を穴が空くほど観察しては、意味もなく裏に返してまた表にする。

 裏に連絡先が書いてあるような気の利いたものでもない。
 あるのは名刺に書かれた職場の電話番号にメールアドレス。

 しかもあろうことか『館長』と書いてある。

 分館とはいえ、一番偉い人じゃないか。
 館長が業務を逸脱していいのか。
 抗議の電話をかけてやろうか。

 だいたい4時の時点で7時まで待てとは、こちらのことをなんだと思ってるんだ。

 と、言いつつも所用を済ませ、こんなところに戻って来た私も物好きってもんよね。
 図書館から斜向かいの喫茶店………がよく見えるカフェに。

 素直に指定された場所に行くほど若くもなければ愚かでもない。
 ぐにゃぐにゃにこれでもかというほどに屈折してると言えなくもないけれど。

 7時少し前に『桜川さん』は斜向かいの喫茶店へ入った。
 からかいだったとしても行く事は行くんだと変な感心をする。

 何が確認したかったのか自分でも分からないまま、気が済むと店を変えることにした。

 だってカフェじゃ酔えないじゃない?




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