オトナの恋は礼儀知らず
20.次はどこへ
「お昼はイタリアンのお店に行きませんか?
 男だけだと入るのに勇気がいるので付き合ってもらえると嬉しいです。
 パスタやピザ、好きなのに。」

 たまに見せる拗ねた顔を可愛いと思った。
 11歳上のそれも50代の男性に失礼かしらと思いつつもやっぱり可愛いかった。

 食事では「友恵さんは何がいいですか?」と聞かれて迷っているものを伝えると「ではそれで」と私が迷っていた両方を頼んだ。

「桜川さんが食べたいものを頼んでください」と訴えても「僕も同じのが食べたかったんです。取り分けて食べましょうね。」と聞き入れてくれなかった。



 その後は「昨日は僕に気を遣ってゆっくり買えなかったんじゃないですか?」と、服の買い物に付き合ってくれて、食材の買い物も一緒に行った。

「意外でした。
 女の人との買い物って長いから普通は敬遠されるでしょ?」

「そうですか?
 僕は楽しいですよ。」

 本当に楽しそうな桜川さんはいくら迷ってもいくら時間が掛かっても嫌な顔1つしなかった。
 それどころか嬉しそうに「これも似合います」と勧めてくれる。

 それに……全部払ってくれた。

 これくらいはさせてください。
 男の顔を立ててください。
 と言われると払いにくくて甘えてしまった。

 今日は桜川さんには甘えてばかりだった。



 食材をマンショに置きに行って「夕食はどうしますか?食べていかれます?」と聞くと、行きたい場所があるとまた外に連れ出された。

「友恵さんがお料理されるのは意外でした。」

「独身長いんだから、当たり前ですよ。」

「僕はダメな夫でしたので、料理は亡くなってからやれるようになりました。
 友恵さんに僕の料理も振る舞いたいな。」

 若い頃の桜川さんが想像できない。

 何もかも奥様にやってもらっていたのか……若い頃の桜川さんを想像しようとすると奥様が邪魔をして桜川さん本人の姿を思い浮かべられなかった。






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