オトナの恋は礼儀知らず
 福田くんのことは桜川さんに相談することはできなくて久しぶりに理香子に電話をした。

 マンションに帰って鍵を閉めて、チェーンもかける。
 こういうのはさすがに桜川さんに聞かれるのは違うと思うから。

「珍しい。久しぶりね。
 桜川さんと別れた?
 それとも結婚が決まった?」

 しまった。
 結婚するんだけど、理香子に言えば喜ばすだけなのに……。

「決めたけど……今日は別のこと。」

「結婚するの?おめでとう!
 桜川さんなら友恵も大丈夫かなって思ってたのよ。
 で、それじゃない別のことって何よ。」

「福田くんが独立するらしくて……。」

「告白でもされた?」

「…………えぇ。」

 あぁ。どうしてすぐ分かるのかしら。

「本当に?福田くんもやるわね。
 マリッジブルーを狙ってるのかしら。」

「違うわよ。
 まだ結婚すること誰にも言ってないもの。
 福田くんは独立する時に言うって決めてた口ぶりだったわ。
 驚いて夜眠れなければいい、ざまーみろって言われた。」

 思い出して些かムッとした。
 いつもの福田くんとの会話みたい。
 カチンとくることを言い忘れないんだから。

「何よそれ。傑作ね。
 で、友恵は揺れたの?
 福田くんに乗り換える?」

 そうだった。好きって言われたんだった。
 福田くんからなんて実感ないけど、それでもそうね答えは決まってる。

「そんなわけないじゃない。
 福田くんなら若いしもっといい子がいるわよ。」

「もし桜川さんと出会う前でも?」

「………同じことを思ったと思うわ。
 後から桜川さんに会ったとしても桜川さんを選ぶと思う。」

「何よ。なんの相談?ただのノロケ話?」

「そうだったみたい。」

 2人で笑い合う。
 理香子とはずっとこういう関係が続くのかな。

 一度、桜川さんと会わせてみよう。
 おじさんねって言いそうだわ。
 そしたら私達もおばさんじゃないってまた笑うのね。





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