私にとって初めての恋。
美陽が自分のクラスに戻った後、神楽は束李と文化祭を回っていた。

「美陽はあれね!私が来れないだろうと思っていて、束李ちゃんも別の人と回るだろうと考え、前半も後半も働こうって思ってた口ね」

神楽が美陽の思考を読み取る。

「やっぱり…私も最近美陽と話してなくて」
「話してない?喧嘩でもしたの?」

神楽は束李と美陽がどれだけ仲がいいかよく知っている。

「喧嘩じゃないんですけど、神楽さん。美陽の彼氏は知ってます?」
「ええ、悠琉くんね。美陽とのお付き合いは許可したわ」
「マジですかっ!?」

さらっと言ってのけた神楽に束李は驚いた。

「いちいち驚いていたら話が進まないわ。ちゃっちゃと話して束李ちゃん」

束李は人に聞かれまいと関係者以外立ち入り禁止区域に入った。

「ここなら人に聞かれませんよね」
「ええそうね。それで、美陽と悠琉くんの間に何があったの?」

束李は神楽に全て話した。
それはもう、美陽が話してくれたこと全てを…。

「……。」

最初は束李の話を頷いて聞いていた神楽も次第に黙り込んだ。
そしてスッと携帯を取り出しものの数秒でメールを打った。

「か、神楽さん?」

静かに怒る神楽に束李はビクビクしている。

「あの子だけじゃダメだわ。悠琉くんに怒りのメールを送ったわ。それでも美陽が好きなら何かしら行動するはずよ」

神楽は束李にありがとうと言って空き教室を出た。
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