私にとって初めての恋。
束李は後から神楽を追った。

「神楽さん!」

束李が神楽に追いついたのは美陽のクラスの目の前だった。

「ふふ、速くなったのね束李ちゃん」
「私だって毎日走っていますから」

2人揃って美陽のクラスに入る。

「あら?ねえ、そこの子」

神楽は近くにいた学生に声をかけた。

「何でしょうか」
「このクラスにいるはずなんだけど、次沢美陽ってどこかしら?」
「次沢さんなら裏方ですよ」

学生は淡々と答えていく。

「じゃあ、呼んでもらえるかしら?」

学生と神楽の会話を聞いて束李は何故かハラハラしていた。

「束李、お母さん」
「美陽!」

声が聞こえて裏から出てきた美陽に束李は安心した。

「浜中さん、少しの間裏方お願いできますか?」
「うん、分かった」

美陽と交代して学生は裏に行った。
美陽は神楽と束李に聞いた。

「遊びに来たの?」

美陽の言葉に束李が頷く。
神楽は美陽の腕を引っ張って自分の方に近寄せた。

「美陽、束李ちゃんから全部聞いたわ。何で話してくれなかったのっ!」

神楽は小さい声で拗ねたように言う。
美陽はチラッと束李を見て神楽に向き直る。

「ごめんなさい。だけど、仕事の邪魔したくなかったの」

美陽がそう言うと、

「悠琉くんのことも受験の邪魔になるからとか考えていたんでしょう?大バカ者!そんなんじゃ欲しい物全部手に入らないわよ」

神楽の言葉が胸に刺さる。
流石母親だと美陽は心のどこかで思った。
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