恋愛ノスタルジー
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「バカだな、恋敵に後を任せるなんて」

圭吾さんのこの一事で、思考が現在に戻った。

「それよりも少し休んでください。あ、花怜さんにはもうお電話されましたか?まだでしたら……圭吾さんの携帯は……」

「……いや、伝えなくていい」

私の言葉を遮ると、圭吾さんはゆっくりと眼を閉じた。

「眠るまででいいから……ここにいてくれるか?……もうなにも……しないから」

キュッと胸が軋んだ。

……慣れなきゃならない。この胸の痛みに。

だって私たちは政略結婚で、圭吾さんには花怜さんという恋人がいるんだもの。

たとえ圭吾さんと結婚しても、彼は花怜さんのものだ。

だから、早く慣れなきゃならない。早く慣れたい。

大丈夫なように、泣かないように、圭吾さんの前ではいつも笑顔でいられるように強くなりたい。

この気持ちは絶対に内緒だ。

多分、死ぬまで。

私は圭吾さんの枕元の椅子に腰かけると、微笑んで頷いた。

「はい。ついてますから安心してください」

私は眼を閉じた圭吾さんの綺麗な顔を見つめて決心した。

鈍感になるわけじゃない。

でも、この気持ちに気付かないフリをしようって。
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