恋愛ノスタルジー
******
******
約八ヶ月前。
「峯岸彩と申します」
見合いの席となった都内の老舗料理店の一室で、彩は小さな声で挨拶をした。
畳の上に手をハの字に置き、優雅にお辞儀をする様は、自然と育ちの良さが出ていて微塵も嫌味を感じない。
「彩さん、お顔を上げてください」
「……失礼いたします」
ゆっくりと身体を起こして俺を見た彩は、フワリと微笑んだ。
「はじめまして。夢川さん」
この言葉に一抹の寂しさを覚えたのを今もしっかりと覚えている。
……彩はやっぱり覚えていなかった。
いや、覚えていなくても仕方がない。
むしろ覚えている俺の方が特異なのだと思う。
**
《約二十年前》
「あなたもパパのお誕生日パーティーに来たの?」
「……うん」
「大変ね、まだ子供なのに」
茶色の長い髪をフワフワさせた女の子は、俺を見上げてそう言うと大きな溜め息をついた。
自分より五つも年下だという女の子の大人びた口調に、俺は一瞬ポカンとしてしまった。
「パパはね、いつも忙しいの。あなたのパパも?」
俺にそう質問しつつ、女の子は持っていた人形に視線を移しその髪を撫でた。
黒目がちの瞳と長い睫毛が印象的な女の子は、多分自分が人形にも負けないほど可愛いことに気付いていない。
******
約八ヶ月前。
「峯岸彩と申します」
見合いの席となった都内の老舗料理店の一室で、彩は小さな声で挨拶をした。
畳の上に手をハの字に置き、優雅にお辞儀をする様は、自然と育ちの良さが出ていて微塵も嫌味を感じない。
「彩さん、お顔を上げてください」
「……失礼いたします」
ゆっくりと身体を起こして俺を見た彩は、フワリと微笑んだ。
「はじめまして。夢川さん」
この言葉に一抹の寂しさを覚えたのを今もしっかりと覚えている。
……彩はやっぱり覚えていなかった。
いや、覚えていなくても仕方がない。
むしろ覚えている俺の方が特異なのだと思う。
**
《約二十年前》
「あなたもパパのお誕生日パーティーに来たの?」
「……うん」
「大変ね、まだ子供なのに」
茶色の長い髪をフワフワさせた女の子は、俺を見上げてそう言うと大きな溜め息をついた。
自分より五つも年下だという女の子の大人びた口調に、俺は一瞬ポカンとしてしまった。
「パパはね、いつも忙しいの。あなたのパパも?」
俺にそう質問しつつ、女の子は持っていた人形に視線を移しその髪を撫でた。
黒目がちの瞳と長い睫毛が印象的な女の子は、多分自分が人形にも負けないほど可愛いことに気付いていない。