恋愛ノスタルジー
ううん、凌央さんの話をしているからかも知れない。

「凌央さんは本当に素敵な人で……私、出逢ったときに思ったんです。三ヶ月間だけでもそばにいて彼を見続けたいって。彼の役に立ちたいって。少しでも身の回りのお手伝いをして素晴らしい画を沢山描いてほしいって。三ヶ月後……正確には三ヶ月切ってますけど個展を開くんです、彼」

……そうだ。凌央さんは個展を開く。確か現代アート展にするとかなんとか。 


『彩、次の個展に向けて急ピッチで作業しなきゃならない。悪いけどよろしくな』


男らしい口元をゆるめ、白い歯を見せて笑った凌央さんが脳裏に蘇った。

その時、

「誰かとキスをしたら、そいつの人格がお前が好きだった頃と変わってしまうのか?」

「……え?」

圭吾さんが真正面から私を見つめている。

「誰かがキスしたら、そいつはそいつじゃなくなるのか?」

心臓がドキッとして、私は思わず息を飲んだ。

確かに……立花優さんがキスしても、私が好きになった凌央さんには代わりがない。

でも……私じゃない、他の人とのキスは悲しい。

圭吾さんは続けた。

「起きてしまった事はもう変えようがない。そいつが好きなら、耐えろ。それができないなら諦めろ。どちらも無理ならそれ以外の方法を考えろ」

私はジッと圭吾さんを見つめた。

男らしい眉や通った鼻筋、それに何よりしっかりと『自分』を持っている瞳。
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