御曹司様はシンデレラを溺愛する

それは、お嬢様方の視線がとても怖いからで、彼からも逃げたかったからだ。


お嬢様方と彼の会話が聞こえてくるが、ある事に集中する。


背後から少しずつ、少しずつ彼の手から自分の手をずらしていく。


後、中指の指先の第一関節を抜けばおさらばだと気を抜いた瞬間、舞うように彼の手が動き私の手を捉えて恋人繋ぎに変わってしまった。


ぎゅっと握られる指先に力が入っていて、振り払うのは無理のようだった。


「お話の途中失礼ですが、彼女と二人きりにして頂きたいので移動してよろしいでしょうか?」


「……お邪魔しました」


柔らかな口調ながら彼の声色は威圧感があり、お嬢様方は戸惑いながら嫌とは言えないらしく下がっていく気配がした。


すると、体ごと振り返った彼は不機嫌さを隠さず見つめてきた。


「なぜ、手を離そうとしたのですか?」


「それは…あなたを独占しては他の皆さまに申し訳ない気がしたので…」


「気を遣っていただいたのですね。ですが、その必要はありません。僕には優里亜さん、あなただけしか見えないのですよ」


「……」


もう、なんなんだろう。
私のどこを彼はお気に召したのだろう?
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