国王陛下の極上ティータイム
その言葉を聞いたクラリスは、ブランが噂を知っていることに気づいた。

「買えたものと、買えなかったものがありました」

「フォルスト産か?」

「噂をご存じなのですね」

ブランは「まあな」と本から顔をあげた。


「紅茶屋の店主に聞きました。外国産のものが入ってこないことと、騎士団の人々がよく動いていること。戦争が起こるかもしれないとも言っておられました」

「そうか、それは困ったな」とブランは言った。

「戦争が起こるかどうかは私達には知る由もないが、王族の方々はさぞかし大変だろう。心労が重なっているに違いない。体調を崩されないといいが」

クラリスは頷いた。

ランティスは今きっと国防のための策をディオンやクロードと共に練っているに違いないが、王太后やジュリエッタ王女も今後の行く末を案じているのだろう。王族にとって国の行く末は自分の行く末と等しい。

「私達にできることは、少しでも休んでもらえるように美味しい茶を淹れることだけですね」

「ああ」

それからブランは「それと、ランティス様からの伝言だ」とクラリスに伝えた。


「クラリスが戻ってきたら、執務室まで茶を運んでほしいと」

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