国王陛下の極上ティータイム
ブランが茶の配合をしている間、クラリスはお出しする菓子を聞くため料理長のもとに訪れていた。

調理場はとても慌ただしく準備が進められていたが、なんとか今日お出しする菓子を教えてもらうことができた。季節の果物を混ぜ込んだパウンドケーキにするらしい。

料理長は忙しそうに準備をしていて声もかけられなかったが、近くにいた若い男性の調理員が気づいてクラリスに声をかけてくれたのだ。


「それにしても昨日の夜ふけに急に決まったなんてな」


「全く、そういうのは早く決めてほしいぜ」と男性は溜め息を吐く。


それはクラリスも同意だった。同盟国の王が来訪するなど、普段なら前もって準備を進めるところだというのに。


「外国の物が入って来ねえのはフォルストのせいなんだろ?そのフォルスト王が今さらこの城にやって来るなんてな。一体何の用なんだか」


それは皆が思うところだった。真意も真実も分からないがこの国ではフォルストのせいで外国との交易が妨げられていると噂が出回っており、同盟国であるフォルストに裏切られたと感じている人々も多い。

そんなこの国にとってフォルストは敵国も同然。敵陣に元首であるフォルスト王が来訪するなど、フォルスト王にとっては火の海に自ら飛び込むようなもの。フォルストにとって、これほど恐ろしいものもないだろう。


「陛下もフォルスト王のことをあっさり受け入れるなんてな」


全く、何を考えていらっしゃるんだか。嘆く男性に、クラリスは笑いかけた。


「ランティス様はとてもお優しい方ですから」
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