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みんなに見送られてキョウはその生涯を閉じた。

オレはキョウが居なくなったあと、みんなに書いた手紙をそれぞれに送った。

遺言みたいなその手紙はオレにもタクミにもハナエにもあった。

キョウは最後までオレと別れなかったが
果たしてそれが本当の気持ちなのかわからない。

ただキョウの手紙を信じることにした。

キョウはタクミへの愛を執着だと簡単な言葉で終わらせた。

でもキョウはわかってた。

タクミが最後まで自分を看取れるほど強くないと知ってたからだ。

それでもオレを愛してると言って息を引き取ったキョウを忘れたくなかった。

高校生のときからずっとキョウだけを愛してきた。

タクミに取られたくないという気持ちもあった。

キョウの言う執着はオレのこの気持ちと変わらない気がする。

執着も立派な愛だときっとキョウもわかってる。

オレに対する礼儀を守っただけかもしれない。

それでもオレはキョウに愛されていたと信じて生きるしかない。

キョウ以外の女を愛せるとは今も思ってない。

いつかそんな人が現れたら
キョウの言う通りオレはキョウを忘れる努力をする。

だけどそんな人が現れるのは多分ずっと先だろう。

キョウは俺にとって決して簡単に忘れられる相手じゃない。

とにかく手紙をみんなに渡した。

タクミやハナエがそれを読んでどう思うかはわからないが
キョウの手紙が本心で無くとも
オレはキョウの愛を信じたい。

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