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諦めても忘れられない
病院は一時、タクミの登場で賑わっていた。

誰かが気付いて噂になり、
その噂がレオの耳にも届いた。

レオはアタシに何も聞かなかった。

「具合どう?」

「うん、悪くないよ。」

アタシの髪を撫で、アタシに口付ける。

「俺がついてるから大丈夫。」

とレオが言った。

重い足かせを付けられた気持ちになったが
レオには感謝してる。

今更、タクミのところには行けない。

病気で苦しむ姿をタクミに見せたくなかった。

「レオ…お願いがあるの。」

「うん?」

「ハナエとタクミが病気のことを知って逢いに来た。

でも…こんな姿は誰にも見られたくない。」

レオはアタシの目を見ないで

「わかった。心配しないでちゃんと休んで。」

と言った。

その日から家族以外は誰も逢いに来なかった。

レオが家族以外、面会出来ないようにしてくれた。

週末になって両親が田舎から出てきた。

「具合どう?熱は?」

「うん、大丈夫。

もうすぐ退院できるって。」

「そう、良かった。

実はタクミくんがね、訪ねてきたの。」

「タクミが?」

「うん、ずいぶん心配してた。

面会出来ないって…聞いたからビックリしたのかもね。

どうして誰にも逢わないの?」

「髪の毛抜けてるし…なんだか痩せたしね、
心配させたくなくて。」

「そう。」

「タクミには元気にしてるって言っておいて。」

「うん。」

アタシはしばらくして退院した。

だけどまたひと月も経たないうちに入院した。

こんな事の繰り返しで嫌になる。

体調はどんどん悪くなる気がして
もう病院から出られない気がした。

そんなことを繰り返して時が流れ
アタシは少しずつ死に近付きにながら
何とか気力を失わずに病気と闘っていた。

そんな時、レオが走って病室にやってきた。

「キョウ、ドナーが見つかった。」

アタシの心に一筋の光が射した。










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