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人生の転機
タクミに抱きしめられて
アタシが感じたのはトキメキとかじゃなくて
レオへの罪悪感だった。

慰めるためにタクミの腕に抱きしめられたけど
今のアタシにはタクミへの愛情よりレオへの情が大きかった。

今のタクミはお父さんの怪我で動揺してるし
心細いんだろう。

家族が寝たきりになるかも知れないなんて
これからのタクミの人生を変えるほど大きな出来事だから。

アタシはタクミのそばに居るべきだけど…
レオの優しさにもそうそう甘えてられない。

これ以上レオを傷つけるのも怖かった。

その夜、レオから電話がかかってきた。

「タクミはどう?」

「うん…かなり凹んでるみたい。

今まで通りって訳には行かないから。

でもね、おじさんこのまま全く歩けなくなるわけじゃないみたいだし、
ちょっと頑張ってリハビリすれば自分でトイレ行ったりくらいはすぐに出来るようになるって。」

「そうか。

何か心配なことがあったらすぐ連絡するように言ってくれ。」

レオはほんとに優しい人だ。

お人好しって言われるくらいバカみたいに優しくて
損する事もたくさんある。

アタシはその優しさに今までずっと甘えてきた。

そして今もまた甘えようとしている。

「レオ、アタシ今週末には一度そっちに帰ろうとおもう。」

「うん。」

「仕事…辞める決心もついた。」

「うん。」

「そしたらレオのそばにずっといる。」

「うん。」

「だけど…その前にタクミの家が落ち着くまでこっちで暮らしてもいいかな?」

レオは少し黙っていた。

そしてしばらく考えてから小さな声で

「うん。」

と言った。








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