エリート医師のイジワルな溺甘療法
そうだよ、先生は好きでもない女にやさしくする危険な男なのだ。好きになっているはずがない。
無自覚な女ごろしで、私生活に無頓着で、ちょっとSで、私はからかわれてばかり。
そしてたまに思わせぶりな態度を取る。ひどくて……でも、すごくやさしい男。
深みにはまって抜け出せなくなる前に、彼女がいる可能性があるって気づいてよかったじゃない。
でも、頭ではそう考えてるのに。先生のことを好きになっていないはずなのに。
胸が痛くて息苦しいのはなんでだろう。
視界が滲むのはどうしてなの?
マイナス部分ばかり並べ立てても、先生の素敵なところばかりが頭に浮かぶ。
……これはもう、私、認めないといけないのかな。
安西雄介の醸し出す甘い糸に絡めとられていて、自力じゃ逃げられないことを。
「ね、穂乃花、大丈夫?」
麻友が私の背中をさすってくれている。いつの間にか、彼女は私の隣に移動してきていた。そんなことも気づかないくらい、先生のことを考えていたのだ。
「大丈夫。もう大人なんだから、自分の心の始末は、自分でなんとかしなくちゃね。心配してくれてありがとう」
自分から行動して、しっかり確かめよう。
恋心が膨らみ過ぎて、これ以上身動きができなくなる前に。