あなたの心を❤️で満たして
「廣瀬さん、もういいですから」


半ば自分が嘘を吐いたことも責められているような気分だった。チクチクと言葉が胸に刺さり、どうにも痛くて堪らない。


「朝食にしましょう。相変わらずの物ですみませんけど」


そう言って味噌汁のお椀と梅干しの入ったおにぎりを彼の前に置いた。
それをじっと眺めていた人が手を合わせ、「頂きます」と言うのを聞いてホッとする。


ひょっとしたら、ヘソを曲げて食べないのではないかと疑ったのだ。
彼は私の嘘を見抜いていて、だからその腹いせをするのではないかと考えていた。



「……美味い」


ボソッと囁く声を聞き、何だかじーんとしてくる。
土曜日はともかく、日曜日は彼と一緒に食事くらいすれば良かった。


結局、黒沢さんは廣瀬さんのお小言に一言も異論を唱えず仕事へと行ってしまった。
今夜は彼が帰って来たら必ず謝ろうと決めて一日を過ごした。


昼間は時々廣瀬さんが薬科大の教授について教えてくれて、それをふむふむと頷きながら聞き流す。


「……あの先生、自分の娘とお坊っちゃまを一緒にさせたかったようですわ」


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