あなたの心を❤️で満たして
昼食後、いきなりそんなことを言い出すものだから驚いた。え?と聞き返すと、間違いありません…と自信満々な様子で続けた。


「それでこの間からお邪魔虫のように電話ばかりしてくるのですよ。大学にわざわざ呼び付けなくても、最近はパソコンで何でも出来るでしょうに」


(あ…そうか…)


短大を卒業後、ほぼ引きこもっていたから忘れていた。
世の中にはネットっていう便利なものが普及しているのだ。


「お坊っちゃまもお坊っちゃまですよ。いくらお世話になったからってあそこまで義理立てしなくてもいいのに」


どうにも気持ちが収まらないみたい。
私は怒り続ける廣瀬さんを見つめながら、彼が結婚したかった相手はやはり私ではなかったんだ…と考えていた。



(どうりで放っとかれる訳よね)


この家には多分お祖父様への義理があるから帰って来るだけで、本当はその教授の娘さんと一緒になりたかったのだ。

だけど、そこへ私みたいなのが許嫁として持ち出されて、対面的な問題もあって入籍しないといけなくなった。


裏を返せばそういうことになるのだ。
そう思うと段々と肩身が狭くなるーー。


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