あなたの心を❤️で満たして
黒沢さんは私のことを見下ろしていて、その顔を見たまま胸がズキンと痛んだ。



「おやすみなさい…」


私達はいつまでもこんな風に別々の部屋で寝るのだろうか。形だけの夫婦なんだから当然と言えばそうだけれど……。


「あの…」


形だけと言えば週末のことを謝るのを忘れていた。
思いきって今のうちに謝っておこうと口を開くと……


「留衣」


いきなり名前を呼ばれて心臓が跳ねる。
何かの聞き間違いかと思い、視線を彼に釘付けた。


黒沢さんは何処か照れた様な表情をしていた。
錯覚かと思いたいけれど、頬が赤く染まっているように見えるから間違いじゃない。


ドキン…としながら、はい…と返事した。
彼の大きな手が頭の上に乗り、ポンポンと上下する。


「この家から出るなんて言わないでくれよ。君はもう俺の妻なんだから」


再度念を押したかったのか、そう言ってくる。
こっちは妻と言われても実感なんて湧かず、その薄っぺらい紙だけの関係が、返って浮き彫りにされたように思えた。


「……ハイ…イイマセン…」


声を固まらせて言葉を返すと黒沢さんは満足そうに微笑む。

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