あなたの心を❤️で満たして
少しすると、正面に見えていたエレベーターのドアが開き、中から蒲池さんが白衣を着て現れた。

私はその賢そうな雰囲気に一瞬圧倒されながら見遣り、ゴクンと唾を飲み込む。


「ようこそ奥様。お待たせ致しました」


淡いピンクのルージュが塗られた唇が開き、そう言って私を出迎える。こっちはまるで敵地に潜り込んだ様な気分に陥り、言葉少なく「こんにちは」と返した。


「主任は今手が離せませんので、私が部署までご案内し致します。どうぞ」


「…いえ、私は…」


お弁当さえ届けて頂けたら…と言うつもりで声を出しかけたが、家を出る前に廣瀬さんから言われた言葉を思い出して、彼の有能ぶりをしっかり目に焼き付けておこうと決めた。


エレベーターに乗り込むと蒲池さんは3階を選んでドアを閉める。
二人きりの空間の中で緊張した面持ちでいると、彼女はちらっと視線を流して……


「素敵な服装ですね。清楚で可憐ですわ」


「は?」


清楚とか可憐とか、聞き慣れない言葉だ。
自分としては古臭くて全然流行にも乗れてないと思っているのに。


(何?嫌味?)


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