あなたの心を❤️で満たして
そう言うのに、彼女は結婚なんて…と笑う。
家事や育児をするよりも、白衣を着て研究する方が好きだと言った。


『変わり者だな』


『貴方に言われたくないわね』


お互い様でしょ…と言う彼女に、自分には許嫁がいると話したことがある。


『へぇー、許嫁!?』


このご時世に?と大笑いされ、俺も困ってるんだ…と言ったんだ。

だが……



『厚志、お前の縁談相手がそろそろ一人になるかもしれん』


そう聞いたのは研究所に籍を置いて二ヶ月後、婚姻を交わす予定の女性には祖母が一人おり、その人の病が最近どんどん進行しているようだ…と明かされた。


『孫娘が短大卒業後もずっと面倒を見ていたんだがな』


病の進行には勝てず、卒業した薬科大の系列病院に入院したと聞いた。


『お前の相手は健気らしいぞ。毎日祖母を見舞って、リハビリにも付き添ってたそうだ』


暇があればどんな感じの人かを見ておけばいいと言われ、名前だけは耳に入れておいた。

それが、『花菱留衣』だ。
彼女と俺は、あのお披露目式の日が初対面ではないーーー。


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