あなたの心を❤️で満たして
『まあ落ち着けよ。誰も今直ぐにとは言ってないだろう。相手の女性はまだ短大生だし、婚姻を果たすのも彼女の身元引き受け人が亡くなってからだ』


『どういうことだよ、それ』


意味が分からず問い正すと、父は祖父からそう聞いているとしか言わず。


『良かったじゃないか。相手が一人になるまではお前も自由だ』


精々好きな研究を続けろよ…と言われたのを覚えている。
あの時は事の次第が飲み込めず、憤りだけを感じた。


然し乍ら、お陰で研究には打ち込めた。

師事する和田教授の元で研究者としての技能を積み重ね、作り上げた新薬で特許を取得することも出来た。



『そろそろ白沢薬品の幹部役員になったらどうだ。研究所では、お前を迎える手筈が整ったそうだぞ』


父に言われて研究所に籍を置くようになったのは三十二歳の誕生日を過ぎた辺りだ。

嫁に行き遅れた研究仲間の蒲池晴香が、自分も一緒に移らせて欲しいと言ったから招いた。


『厚志さんの研究補佐をするわ。貴方の作り出す薬には何かと興味深いものがあるから』


『俺の手伝いなんかしてないで、さっさと嫁にでも行けよ』


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