あなたの心を❤️で満たして


「……そうですか。貴方が…」


納得がいくようにもう一度声にした。
私はその声を聞いて胸が狭まり、何も感じなかったらしい父は、彼を避けるように回り込んできた。


「母さんはどうした?元気なのか?」


祖母のことを口に出し、その声を聞いて顔を見つめる。

若い頃には祖母に似ていると思っていた顔は、どちらかと言えば祖父似だ。

以前にはなかったはずの皺が目尻に寄り、髪の毛にも白髪が混じってすっかり老けてしまってる。

その所為なのか苦労を重ねたように見えて、明らかに幸せそうとは思えない。



「お祖母ちゃんは、死んだよ」


葬儀にも遺骨を拾いにも来なかった人に告げた。
祖父の葬儀にちらっと顔を見せに立ち寄ってから、一度も顔を見せに帰って来たことがない。


「パパは…今まで何処で何をしてたの?お祖母ちゃん、きっと心配していた筈よ」


一度だって父のことを口にはしたことがない。けれど、きっと気に掛けていた筈だ。


「お祖父ちゃんの命日にも現れないで、お祖母ちゃんのお葬式も知らないでいたのに何よ!今更どうして此処へ来たの!?」


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