あなたの心を❤️で満たして
諸手を挙げて賛成はしないと思うけれど、父を守る為に使ったのなら文句は言わないのではないだろうか。


私はもう黒沢なんだからお金は要らない。
旦那様もいるし、一人でもない。
だから、きっと渡しても生きていける筈ーーー。



(多分……)


覚悟を決めて進みなさいと言った祖母の言葉が頭を過ぎった。これからは黒沢留衣として、覚悟を持って歩いていくんだ……。



「分かった…」


祖母の言葉に応じるような気持ちで囁く。
それを聞いた父が一瞬顔を綻ばせた。
だけど、私と父の間に立つ人は、「駄目だ」ときっぱり断った。


「駄目だよ、留衣。お金を貸したらいけない」


そう言うと私の前に立ち塞がり、父に向かってこう言った。


「お引き取り下さい。俺は夫として妻の財産を守る役目がありますから」


「なんだ!貴様!」


貸して貰えると期待が大きかったのか、断られた父は悪態を吐いた。
黒沢さんはそれにちっとも動じず、同じ言葉を繰り返した。


「妻に残された財産は既に自分の物でもあります。夫婦として財産を守るのは当然のことでしょう」


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