あなたの心を❤️で満たして
「おやすみ」


電気を点けるとそう言ってドアから手を離した。
脇をすり抜けて自分の部屋へ向かおうとしている。


「えっ?あの…」


旦那様、私達は新婚ではなかった?


ついさっきまで怖いと思っていたのに、急に一人にされると心細さが先立つ。



「何?」


向き直った彼が聞き返した。


「いえ、あの……」


同じ部屋に居てもらいたいのだけれど、さっきのリビングと同じ雰囲気だったら嫌だ。
居るならきちんと話しかけて欲しいし、せめて笑いかけて欲しいと思う。



「……何でもないです。おやすみなさい」


ドアを押し広げて部屋の中へ入った。
閉めるとノックされることもなく、ガランとした部屋の中を見つめる。


(私達、ずっとこんな感じのままなのかな。入籍も済ませて形だけは夫婦として認められたのに、家の中ではバラバラで過ごすの?)


確かに臨んで夫婦となった訳ではない。
だから、バラバラでも仕様がない部分もあるとは思う。


(それでも、こんなままでいるのは嫌だな……)


夫婦としてこの家に住むのなら、形だけではなく心の触れ合う関係になりたい。

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