あなたの心を❤️で満たして
先を歩いて玄関ホールまで来ると、彼は何も言わずに廊下の明かりを落とした。パッと暗くなる背後に気づいて振り向くと、廊下は仄暗い常夜灯が点いているだけで。



(ひぃぃ…お化け屋敷みたい…)


床のタイルがぼんやりと闇に浮かんでいる。
それを目にすると、昨夜はやっぱり消さなくて正解だった…と感じた。


ゾォ〜とする怖さを覚えながらギクシャクと二階へ上る。
私の後ろから付いて来る黒沢さんの足音も怖くて、お化けか何かに追いかけられているみたいな感覚だ。


(この家、やっぱり好きになれないかも…)


前に住んでいた家に帰りたいよ〜と胸の中で泣き言を叫んだ。

黒沢さんは私が歩を進める度にホールや廊下の電気を消して歩き、まるで部屋のある方へと追い込んでいるみたい。



(怖ろしいよ〜)


このまま部屋に連れ込まれたら絶対に泣き出しそう。
大袈裟だけど、それくらい心臓がバクバクと鳴っている。



「…どうぞ」


カチャと開けられたのは自分の部屋のドア。
キョトンとして振り返ると、彼は電気のスイッチを点けようとしている。


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